ヨーロッパリーグのリスペクトフェアプレー枠が今シーズンを最後に廃止。あらためてその功績を褒め称え考察する・・・と廃止も当然に思えてくる珍規定にスポットライトを照射。
7文字にUEFAの理念
日常TVを観る時間がない筆者に友人がNHKの連続ドラマ「あまちゃん」再放送の録画を薦める。クドカンの濃密な脚本と名優達の好演。根底に散りばめられた“郷土愛”が視聴者の共感を得た2013年のあまちゃん社会現象も肯ける。
下の写真は、昨年UEFAチャンピオンズリーグ(CL)カンプノウのゴール裏から撮影した。CLの公式戦(本戦)は、どの都市のどのスタジアムでも、ヘンデルの原曲を英国のトニー・ブリッテンが編曲した混声合唱は流れ、RESPECTの文字がピッチ外周を囲む。これはUEFAがフェアプレーを推奨するキャンペーンの告知媒体。5月1日から1年間UEFA主催の公式戦で査定されたフェアプレーランキングの集計に基づき上位三ヵ国が発表された。
査定6項目は次の通り。
- ①赤黄色カードの累計
- ②ポジティブなプレー
- ③対戦相手への敬意
- ④審判への敬意
- ⑤役員・チーム関係者の態度
- ⑥は後ほど詳しく。
ちなみに査定対象は、クラブチームだけではなくUEFA主催であれば代表チームの試合も含まれる。
[カンプノウ]
鳶に油揚げ 鷲にボタ餅
2014-15シーズンの集計結果はオランダが首位と発表された。加盟各国の協会も同様に国内リーグで査定を実施しているためオランダサッカー協会は、1部(エールディビジ)でのフェアプレーランキング集計を発表。数値が首位のクラブチームは勝敗順位を度外視してUEFAヨーロッパリーグ(EL)予選出場権が与えられる。これを棚から牡丹餅と言わずして何が牡丹餅なのか。
エールディビジは優勝と2位はCL出場、ELは3位そして4位から7位の4チームによるプレーオフを勝ち抜けば残る1枠が手に入る。4位のチームにとって少々残念なレギュレーションである。またカップ戦ウィナーのEL出場も他国と同様。
さてボーナス枠はどのクラブにと固唾を呑み「ゴーアヘッド・イーグルス」の名前に肩透かしをくらう。2014-15シーズンの成績は18チーム中17位。アヤックスからレスリー・デ・サをレンタルしたが期待のサイドアタッカーは怪我に泣かされた。入れ替え戦でもデ・フラーフスハップに敗れ2部降格したチーム。鳶に油揚げを攫われるのではなく、鷲に牡丹餅を攫われた中堅各チーム。強者の宴CLと2部チームでも参加できるELでは趣旨が異なる。
[ユース時代のデサ]
地元の“アマ”にも恵与された夢見る権利
1999年EUの通貨統合と時期を同じくして各国内カップ戦ウィナーによるコンペティションがELの前身UEFAカップへ吸収統合された。欧州は4部= アマチュアからカップ戦へのエントリーが通常。イタリアであればセリエDの昨季加盟数は167。上位9チームが参加権利を有した。
自分の親戚や友人が所属しているような身近なアマチュアクラブのために、コッパイタリアを勝ち抜きELも制覇すると、翌シーズンのCL優勝・・・までの限りなく狭いゲートと細くて長い小道は開通している。
頂点にたどり着く可能性が、サハラ砂漠で一粒の米を見つける程困難でも確率ゼロではない。オラが街のクラブでもFCバルセロナと対戦できる夢を見る権利をUEFAは供与している。フットボール観戦と暮らしが長い年月を共有して郷土愛は育まれた。ゴーアヘッド・イーグルスは1964-65シーズン国内カップ戦を制して欧州の初舞台に立ちグラスゴー・セルティックに敗れた。
昨シーズンは2回戦格上フェイエノールトに2-0で勝利記事を『フットボール・インターナショナル』誌で発見して「じぇじぇ」。3回戦は当時宮市所属のトヴェンテ戦。アヤックスからレンタル中の若手GKのミッキー・ファンデル・ハートの好守もあって、後半開始9分に退場者を出しながら、120分間無失点でPK戦に。元アヤックスのスヒルデルの蹴ったボールは右ポストに弾かれたが、ハートの体に当たりラインを越えイーグルスは涙を飲んだ。