ぷら~り 欧州蹴球場百景【52】レッドブルアリーナ/ ザルツブルグ

ザルツブルグのレッドブル・アリーナを訪問したのは、約五年前2013年5月のシーズン最終節。この国はウィンターブレーク期間が長い分、シーズン閉幕も遅い。灰色の空に背景のアルプスが醸し出す冷たい空気の中、前節優勝を決めたこともあってご機嫌のアウストリア・ウィーンサポーター達。


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欧州のスタジアムを訪問する度、毎回出逢う憎めない輩達と親睦が深まる。印象に残ったのは下の写真。ウィーンからの車中で回し飲みでもしてきたであろうワインボトル。ウィーンに行けばショップ棚のボトルに手を伸ばさずにはいられない。皇帝ヨーゼフ2世の恩恵をにより培われたホイリゲ文化の都。


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飲み過ぎて羽目を外すのも茶飯事と、POLIZEIのパトカーが周りを固めるのもまた見慣れた欧州の風景。


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一方ザルツブルグの自慢は国内最大のビール民間醸造所。ウンタースベルク山からの湧き水を原料とするシュティーグルのビールは、アリーナでも愛飲されている。


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ユーロ開催にあわせ2007年収容規模を三万人オーバーまで拡大した。7万5千人収容の器では9割が空席になるジャイアンツ・スタジアムは問題外、ドルトムントの驚異的な集客力と比較できないが、人口15万人の街では空席が目立つのは致し方無い。


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あづ紗さんが手にした紙面の折れ線グラフは、シーズンの観客動員数を表している。年間152.074人でフィニッシュ。過去の年間最大動員数はレッドブル社の買収で生まれ変わった2005-06シーズンの297,218人。前年の9位から2位に躍進しており一試合平均にすると16,512人。冬に宮本恒靖現ガンバ大阪監督と三都主が移籍した翌シーズンは10年ぶりの国内制覇で観客数も15000人を上回っていた。しかし2009-10シーズンから緩やかに下降線をたどり、11-12シーズンには1試合平均1万人を下回った。


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ザルツブルクは、ラングニックがロジャー・シュミットをドイツ4部のクラブから招聘して一年目。前年優勝時より9ポイント上乗せしながら順位は2位。2009-10の優勝時も76ポイントだから獲得したポイントだけ見れば悪くはない。UEFAチャンピオンズリーグの予選出場権も手にしたのだから合格点を充分に与えられる。

それでもこのシーズン首位を走り続けたライバルの存在が客足を鈍らせた。獲得したポイント数は82。過去を振り返っても80点越えを達成したクラブは見当たらない驚異的なハイアベレージ。快挙を成し遂げたのは、シュミットと同じくこの年から指揮を執ったペーター・シュテーガーだった。

3月15日ボルシア・ドルトムントの指揮官として、約五年ぶりに立った母国のピッチサイドは、五年前金皿を掲げた因縁のレッド・ブルアリーナ。

独自の戦術理論に基づいてインテンシティの高いチームを拵えるシュミットに対して、シュテーガーは選手ありきでスタイルには執着しないタイプ。結果シュテーガー体制に移行し出番を確保した香川真司は輝きを取り戻す。ロシア大会終了後英匡紙The Guardianは全参加選手736人の中5位と日本代表を牽引した彼を高く評価した。アジア勢で唯一ベスト16入りを果たした好成績の陰に、多くの(異国の)恩人達。ペーター・シュテーガーがその一人であることに間違いない。【五十二景了】次回53景に続きます

文/撮影:横澤悦孝 モデル:森川あづ紗