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欧州蹴球文化探訪 第三十九の巻 驚愕のアスタナとアイントホーフェンの葬列

マレーシア航空機撃墜犠牲者を追悼する一周忌に思う

 「表参道高校合唱部!」も先週第8話が終了、終盤の盛り上がりを見せる。第6話では心の瞳が合唱され目頭が熱くなった。オモコーを視聴されていない方、心の瞳をご存じない方のために一行解説を加えると丁度30年前。1985年日本航空123便の墜落事故により逝去された国民的歌手坂本九の遺作である「心の瞳」は、現在合唱の定番曲になっている。
 昨年7月、アムステルダム発クアラルンプール行きマレーシア航空17便のボーイング777型機がウクライナ上空にてミサイルで撃墜され、乗員乗客298名全員が死亡する惨劇。乗客の多くがオランダ人。ウクライナ(親ロシア派)は人道的な対応を取らず隠蔽工作(遺体から現金や金品を搾取したとの情報も)の報道がオランダ国民を憤慨させた。オランダ、ロシア、ウクライナの間に緊張感が増し不穏な空気に包まれている時に限ってヨーロッパリーグGS同組にディナモ・モスクワとPSVアイントホーフェンが組み込まれた。幸いのこの両チームは共に決勝トーナメントに進出。一方CLのグループステージではアヤックスが4-0でアポエルを粉砕ヨーロッパリーグ決勝トーナメントへの権利を手にした。下写真は翌日のAD紙面。

 あたらないほうがよいかなと思うと嫌な事は実現する。良いことは中々実現してくれない。冒頭のPSVアイントホーフェンとゼニト、またレギア・ワルシャワ(ポーランド)を破ったアヤックスはドニプロ(ウクライナ)と対戦し共にトーナメントから姿を消した。

自由を謳歌する為に自由を履き違えない国民性

 あれから一年が経過、オランダでは親ロシア派の武装勢力組織によって撃墜されたと声明を発表し国際犯罪法定に訴える構え。対してロシアはオランダの“花”を衛生上に問題有として輸入禁止の可能性を警告した。これに対しオランダの農業団体LTOネーデルランドは基準を満たしていると主張。誰が聞いても考えてもあきらかに報復=嫌がらせである。

 一年前、霊柩車のパレードがアイントホーフェン空港からアムステルダム近隣の軍施設に向かう映像が世界に発信された。小さな空港ではあるが、ローマ行きの便があるので筆者も何度か利用している。


[アイントホーフェン空港]

 霊柩車に花を投げる少女は理解できる。拍手するのも日本では考えられないがオランダでは「お帰りなさい」の意を表す行為なのだろう。写真を撮影している人は理解に苦しむ。
 この映像に違和感を持った日本人も多いはず。速やかに家族の下に届け静かに弔うべきと考えるのは日本文化に基づく思考回路。お国柄の違いと言いたいが、この葬儀に対して国外で戦死した軍人と同様のパレードを行うことは、民間人の死者を政治に巻き込む行為。内外の反露感情を煽る政治的パフォーマンスと取られても仕方ない等、多様な観点からオランダ国内においても批判の声があがったと聞いて、あらためて航空機事故による対立感情がスタジアムへ持ち込まれなかったことに成熟したフットボール先進国の一端がうかがえ安堵したことが思い出された。
 自由を謳歌する国と称されるオランダだがNGO国境なき記者団の調査データでは、報道の自由指数では例年世界第1~2位をキープしている(近年の一位はフィンランド)。

 国民が自由であるためには国民各々のモラルと思惟の深さが求められる。