欧州蹴球文化探訪 ベルギーの光と闇 第十九話 法曹界の風雲児、リエージュから現る

 NHK大河ドラマ「真田丸」を欠かさず視聴している。翌朝から始まる過酷な一週間を乗り切るために鋭気を養う方も多いはず。脚本は三谷幸喜。前回大河ドラマを見たのも彼が手がけた新撰組。主役は堺雅人。強欲な敏腕弁護士 小美門けいすけに続き、真田信繁(幸村)。ある時は頭脳明晰な二枚目、軟弱系の三枚目の二面性のキャラクターを使い分ける堺演ずる日の本一の兵(つわもの)へと成長する演技に期待が高まる。
 

 昨季は連覇を達成したセヴィージャが今季もファイナルに。筆者も三連覇を期待するクラブの会長職に。ホセ・マリア・デル・ニド氏が就任したのは2002年。前職が弁護士という経歴が印象に残った。このニド会長は破産寸前のクラブ財政を立て直す。2000年から在籍するモンチ・スポーツディレクターとファンデラモス監督、フロントと現場の二人三脚で、移籍金が低額もしくは発生しない良質な選手を獲得し、下部組織出身の有望な若手と共にピッチに送り出すことでUEFAカップを連覇(2005~07年)、首都とカタルーニャの2強に対抗してきた。2013年当時、一度はカンテラの人材難に補強も不調が重なり低迷するのだが、ウナイ・エメリを監督に迎えると再び輝きを取り戻した。

russia

チャンピオンズリーグ同様、この決勝会場を前年に決めて一発勝負方式は非常に有難い。
記憶に残るのは旧UEFAカップ時、1990年のファイナル。大会直後の地元W杯で得点王に輝くサルバトーレ・スキラッチを擁するユヴェントス、一方セレソンの主将ドゥンガとアズ―リの至宝 ロベルト・バッジョの二枚看板はフィオレンティーナ。スタジアム改修中でホームスタジアムのアルテミオ・フランキが使用できなかった為、後にジュビロ磐田で同じ釜の飯を食う両者の対決は前者に凱歌が上がる。もしこの時代のレギュレーションが中立地での“一発勝負”であればロビーとカルロスはトロフィーをトスカーナに持ち帰っったかもしれない。

baggio

ジャン・ルイ・デュポン
1965年リエージュ出身。88年地元リエージュ大学を卒業。翌年に欧州連合法のマスターを修得。ベルギー人だけあって語学は堪能。ワロン地域なのでフランス語がネイティブ、
英語・スペイン語・イタリア語、とドイツを除く主要リーグの言語をこなし、ポルトガル語も問題なし。

 
sev

アヤックスの理事会席上で、「あなたがこの席にいられるのは女性だから」と故ヨハン・クライフに侮辱(?)された女性弁護士のエピソードも笑えたが、欧州のフットボールファンに「弁護士」の名前を問えば間違いなく返ってくるのは、あのベルギー人の名前だろう。

1995

1995年のボスマン勝訴以降、フットボールに関する様々な案件を依頼されてきた。
そのデュポン。2013年5月、代理人を営む同胞ダニエル・ストリアニの依頼でベルギー高等裁判所に提訴した。その内容は、「UEFAが新たに定めたファイナンシャル・フェアプレー(FFP)規定は、欧州連合法に抵触する」
UEFAは過剰な支出による財政破綻を抑制する目的で、制限を設けると選手及び代理人双方の収入をも不当に制限することになり、更に現在の巨大クラブ優勢の状況を維持・継続させるので宜しくないとの見解を述べている。

そして昨年 6月ベルギーの裁判所は、ファイナンシャル・フェアプレー(FFP)計画の継続を一時差し止める判決を下した。当然UEFAは「違反していない」と不服を控訴裁判所に申し立てた。この場合、下級裁判所の判決は差し止められるので、決着がつくまではUEFAが継続してFFPを推進することになる。

i

「パナマ文書」流出からテレビ放映権取引の不正疑惑が発覚。検察の眼はジャンニ・インファンティーノ新会長個人にも向けられた。
FFPを発案したインファンティーノも元々弁護士先生。2000年にUEFAの法律業務に携わり2004年に法務部門責任者に。こちらは英語・フランス語・スペイン語・イタリア語そしてドイツ語も堪能。