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欧州蹴球文化探訪 第三十二の巻 リールで学ぶ。リールに学ぶ。

 前回伏線をはった欧州文化首都。2004年のリールを実例に欧州自治体レベルの文政策について主観たっぷりで書いてみた。ビールだけでなくゴーヤの「苦味」も美味いと判断できる方には賛同いただける第三十二巻

大舞台でのお披露目に準備万全のスタッド・P.モロワ

 2016年のユーロフランス大会に向けての予選は第7節を迎え9月の第一週末、欧州各都市でナショナルチームが夏の終わりに火花を散らす。皮切りとなるのはアゼルバイジャンークロアチア戦。レアル・マドリー移籍が決定したマテオ・コバチッチのクロアチアを同国の英雄ロベルト・プロシネツキ率いるアゼルバイジャンが迎え撃つ。

 そのクロアチアとも初出場国の日本が対戦した懐かしの1998年ワールドカップ・フランス大会と同じく10都市で開催されるのが来年のユーロ。18年ぶりとなる国際大会の開催都市を比べてみるとモンペリエ、ナントに変わりリールとニースが選ばれている。

 2012年に完成したスタッド・ピエール・モロワは市街からは6キロ南東のビルヌーブ・ダスクにある。移動手段はリール・フランドル駅から地下鉄1号線に乗りシテ・シャンティフィク駅にて下車。駅名が示す通り企業の研究所や大学校舎に囲まれた地域。スタジアムまでの1キロに満たない道中、この地で学ぶ多くの学生とすれ違った。チケット売場のスタッフも大学生のアルバイトとお見受けする。

 鉄鋼・繊維・食品など各種製造業で栄えたのがリールとその南東60キロに位置するヴァランシエンヌ。しかし戦後不況で工場が次々と閉鎖、一時の失業率は30%近い深刻な事態に陥る。そこで元首相のピエール・モロワ市長は「ユーラリール社」による再生プロジェクトを遂行。まずは高速新幹線を誘致。専用駅が建設され現在は英仏海峡底をトンネルで結ぶユーロスターとパリからブリュッセル、アムステルダムを結ぶTGVで形成される逆さトライアングルの中心を確保。効果覿面外国人ツーリストが急増しホテルをはじめとする観光産業が活気を取り戻した。ヴァランシエンヌに日本のトヨタ自動車が工場を建設したのは2001年。外資企業のリール首都圏進出への先鞭をつけ雇用創出を促進させた。

 地元のフットボールクラブ、リールOSC も躍進。ハリルホジッチ監督が二部から昇格させると2000-01シーズンは3位の好成績。一気にUEFAチャンピオンズリーグの出場権を獲得する。

リールOSC、パルマを破る

 2001年8月8日パルマのホーム、スタディオ・エンニオ・タルディーニ。

 このシーズンASローマから移籍した中田英寿は10番を背にスタメン出場。ローマ在籍時は2年連続UEFA杯を経験しているが、予選とはいえ日本人が欧州最高のコンペティションでピッチに立つのは奥寺康彦氏以来。チャンピオンズリーグの名称に変更されてからは初となる。(※稲本のアーセナル、小野のフェイエノールトはGSからの出場)

 試合は0-2でホームチームが敗戦。アウェーで0-1と一矢報いるが合計1-2の敗退。この番狂わせを、既にシーズンが開幕していたフランスのクラブが相手では、始動の遅いセリエAの不利は否めないと専門誌紙面は冷静に分析していたと記憶する。

 後にオーナーとなる映画プロデューサーのミシェル・セイドゥが株式の一部を購入しクラブの経営に関わるようになったのもこのシーズンから。

欧州文化首都 リールの文化「街おこし」プロジェクト

 本年の欧州文化首都にプルゼニとベルギーのモンスが選ばれたことは前巻でふれた。この西側と東(旧社会主義側)とのペア形式は、現在の欧州文化首都に2005年名称が変更されて以来のスタイル。

 大陸に刻まれた悠久の歴史はあまりにも国境を動かし人種をクロスオーバーさせ過ぎて複雑な感情を育んだ。欧州文化首都の目的はシンプルで明確だ。欧州各国の文化から共通のエレメントを見つけることと各国の違いに気づき異文化を尊重しあうこと。

 2004年中東欧など10カ国が新加盟して計25カ国の大所帯へと発展した欧州連合(EU)の文化首都を任されたリールは、「芸術文化による都市再生」プロジェクトに取り組む。結論から述べればこの計画は大成功。新ジャンルの雇用創出をビジョンとして掲げ、商工会議所を中心にITマルチメディアの企業や学校など地元でのクラスター創生を遂げて現在へと繋がる。

 ユーラリール再開発の目玉として二つの駅をつなぐミッテラン広場には、全長8mヴィヴィッドな水玉に彩られたチューリップのモニュメントが設置されている。日本を代表する草間彌生の作品。同氏とは14年前の接見以来久しいが世間のイメージ・・・どおりの半端なくぶっとんでカッコいいアーティストである。

 「芸術文化による都市再生」といっても、リールで新ハコモノ(劇場、ホールなどの施設)建設の発注ラッシュは無く地元ゼネコンも肩透かし。郵便局など老朽化の著しい公共施設を匠の技(?)で少々リノベーションを施して活用した。(リノベーションとは建物の使用目的を変更するための改修)。

By | 2015-11-09T16:03:40+00:00 8月 23rd, 2015|Categories: コラム, その他コラム|Tags: , , , , , , , |欧州蹴球文化探訪 第三十二の巻 リールで学ぶ。リールに学ぶ。 はコメントを受け付けていません。

About the Author:

Yoshitaka Yokozawa
1964年生 / 東京都在住 NPO・NGOの経験を活かしてサッカルチャー・チャアマンをしてます。 本業は国際交流コンサルタント。文化催事の企画運営や講演など欧州と国内をころげまわってます。 サッカルチャーコラム連載では欧州蹴球文化探訪(全41回) 同ベルギーの光と闇(全27回)※最終話そのうちUPします。 長靴の国で観た異邦人たち(全21話) サッカルチャー・ホームタウン秘書室(2017年~ 同 日本人が知らないアーセナル 全8回含)他。 サッカルチャーやっててよかったのはバルセロナで故ヨハン・クライフに逢えたこと。世界各国の”秘書たち”とビールを飲むのもささやかな楽しみ。