―――もし、今1部に入ったらどうなると思いますか？
（千葉）「もう付いて行けないと思いますよ。」
―――でも、そろそろ1部に昇格したいですよね？
（千葉）「特に今年は本当に行けるという手応えを持っているので、前半戦は終わっちゃいましたけれど、まだ諦めてないし、頑張れる位置にはいるので。後半戦で取り返します！」
―――では、昨季は優勝を遂げたリーグカップ開幕に向けての抱負や注目ポイントをお願いします。
（千葉）「カップ戦だからリーグとは関係ないわけでもありません。やっぱり、誰が出ても同じアルビオンのサッカーが出来るようにならなければいけないですし、練習からチーム全員で息を合わせて行きます。監督も『リーグで試合に出ていない選手も積極的に使って行く』と言っているので、今まで試合に出ていなかった選手と出ている選手とが組み合わさってチームを底上げして、リーグの後半戦にも繋がるような大会にしていきたいです。」
―――本日は試合直後にも関わらず、長い時間ありがとうございました。
観客をワクワクさせる『ザ・千葉園子・デー』
筆者の記憶には、『ザ・千葉園子・デー』という試合がある。昨季から新設された、プレナスなでしこリーグカップ2部の決勝・日体大FIELDS横浜戦だ。2-0と勝利したハリマがクラブ史上初タイトルを獲得したこの試合、千葉は4-1-4-1（4-3-3）システムの1トップとして先発し、前半28分に追加点となる得点を挙げた。
凄かったのは得点だけではない。ハリマは総シュート数が4対18という圧倒的に押し込まれた中、千葉はチームが2点リードした後半は左サイドMFに回って守備に奔走し、最後はインサイドMFに入ってフィジカルや球際の強さを披露して逃げ切りに成功。見事に3つのポジションの役割をフルスロットルでこなして優勝に導いたからだ。
中盤でも前線でもどんなポジションでもこなす千葉だが、どのポジションで起用されても、ドリブルで相手3人を引き付けながらキープしたり、自ら交わしていくプレーも披露する。ゴール前や裏に抜け出すプレーが得意で、ゴール前で胸トラップしてのシュートやヘディングには男子顔負けの迫力を感じさせる。「コレが千葉園子だ！」、と言えるプレーの大きさや自身のプレースタイルがある。その核が揺らがないからこそ、どんなポジションで起用されても自身を見失わずにプレーできるのだろう。
インタビュー中にも伺ったが、『プレミアム・フライデー』や『働き方改革』が叫ばれる昨今にあって、千葉は職場でもハードワークをこなしながら日々のトレーニングに励み、試合でも攻守両面で縦横無尽に動き回っている。
筆者は取材日以外にもハリマの試合を何度か観戦してきたが、スタンドに訪れたファン・サポーターの中でも特に子連れのお母さんたちが、千葉にボールが渡りそうになると、「ほらほら、千葉選手来たよ！来たよ！ほ～ら」と、嬉しそうに、時に興奮しながら子供に言っている声をよく耳にする。千葉は自身のプロフィールの『今季の目標』欄に、「観客をワクワクさせるサッカーをすること」と書いている。すでに千葉は観客をワクワクさせている。
なでしこジャパンの高倉麻子監督も、その1人かもしれない。2部所属でトップレベルでの経験が浅い選手たちを、「経験がないからこそ、人の話をまっすぐに受け止める素直さや、自己犠牲をいとわないチームへの献身がある」と言い、「私の考えるサッカーのコンセプトもあるんですけど、まだそれを消化しきれずに悩んでいる選手もいます。そういう選手には『どうぞ悩んで下さい』というスタンスで見守っていきます。」との言葉も残していたが、これは千葉のことを指しているのではないだろうか？インタビューをしていても、彼女の素直さやストイックさをヒシヒシと感じた。
おそらく、千葉園子はなでしこジャパンにも戻ってくるだろう。そして、日本中の人々をワクワクさせてくれるだろう。今はまだより近くで観られる彼女のプレーを楽しみにしたい！
【プロフィール】
名前:千葉 園子（ちば そのこ）
生年月日:1993年6月15日（23歳）
出身: 大阪府大阪市
身長:161cm
体重:48kg
所属チーム: 日ノ本学園高等学校→姫路日ノ本短期大学→ASハリマ・アルビオン（2013-）
ポジション:MF・FW
背番号:10
代表通算5試合0得点
なでしこリーグ2部（相当）通算:71試合22得点（今季:10試合1得点）