Warning: count(): Parameter must be an array or an object that implements Countable in /home/orfool/soccerlture.com/public_html/wp/wp-includes/post-template.php on line 293
no-image

武藤嘉紀が宇佐美貴史を逆転した証明 知性・フィジカル・経験を凝縮した1点目

 2ステージ制に移行したJ1リーグが開幕。NHKの生中継で放送されたのは昨年のJ1リーグ・ナビスコカップ・天皇杯を制覇した3冠王者のガンバ大阪が、そのエースFW宇佐美貴史と同級生に当たる22歳の日本代表FW武藤嘉紀を擁するFC東京を迎えるホームゲームでした。

 試合は3冠王者が前半終了間際にゴールラインでラインを完全に割ったボールを両チームの選手や観客全員が見ている中で、スタジアムの中で唯一主審が見逃し、そのままプレーを続けたガンバ大阪が日本代表MF遠藤保仁のシュート性のクロスにFWパトリックが頭で飛び込んでガンバ大阪が先制して前半終了。後半開始早々にも右サイドで開いて受けた宇佐美がパトリックとのワンツーからぺナルティエリアへ侵入してリターンパスを受けたところを倒されてPK獲得。自らPKを蹴る意思を見せた宇佐美がコレを冷静に決めて3冠王者は2点リード。しかし、2点リードを守りに入った隙を突き、FC東京は新加入の元日本代表FW前田遼一の完璧な落としをエリア内で受けた武藤が相手DFを背負いながらのターンで決めて1点差。終了間際にも相手DFのクリアボールを拾った武藤がミドルレンジから豪快な右足ドライヴシュートを炸裂させ、試合は2-2のドローで終了。

 2点目のゴールの豪快さは武藤も尊敬するレアル・マドリード所属のポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドばりの“ゴラッソ”でした。“今節のベストゴール”となる事でしょう。しかし、あの状況、あのボールの高さはサッカー経験者であれば理解できると思うのですが、非常にブレ球やドライヴ回転で落ちるような強いシュートを蹴りやすい状況なのです。もちろん、あれを選択した判断やトラップの置所、シュート力、決定力は特筆すべきスーパープレーなのですが、僕の中では1点目のゴールの方が完璧に感じました。

 長めのクロスボールが前田に入る時、前田がボールを落としやすい角度、距離にポジショニングを取り、ぺナルティエリア内で受けた武藤。ゴールに対して背を向けながらも、対応するガンバ大阪DF丹羽大輝からボールを隠すように身体を使ってターンして前進し、シュートはGKやDFのタイミングを外すようなシュートで冷静に流し込む。彼のインテリジェンス(知性)、端正なルックスとは裏腹のフィジカルの強さ、代表を経験した間合いの使い方なども活きた、成長の証が凝縮されたゴールだったと思います。宇佐美はあの2点目を羨ましく思うでしょうが、代表キャップ数でゼロの宇佐美と、すでに10を刻む武藤の差はあの1点目にある事を理解しなければいけないでしょう。

 試合は引き分けに終わりましたが、22歳の同級生対決は完全に武藤に軍配が上がったと言えるでしょう。それこそ未だに代表デビューを果たせていない宇佐美と、キャップ数10を刻む武藤の差の証明だったと思います。

 それにしても年代別代表のエースだった宇佐美と、年代別代表には1度も選出されなかった武藤の立場が今では完全に逆転しているのは興味深い話です。

 宇佐美は中学生の時から所属するガンバ大阪の下部組織から2009年にトップチームに飛び級昇格。2010年にはJリーグの最優秀ヤングプレーヤー賞を受賞。2011年には世界屈指の名門であるドイツの強豪バイエルン・ミュンヘンへ移籍し、ホッフェンハイムと合わせて2年間をドイツで過ごしました。その間、2011年と2012年に日本代表に招集されているものの、未だにフル代表デビューには至らず。キャップ数はゼロのまま。

 対して武藤はFC東京のスクールに小学生から通い、U15、U18と順調に昇格を果たしたものの、トップチーム昇格を「プロでやっていく力が足りない」として、自ら大学進学を選びました。それが2011年の事で、宇佐美がバイエルン移籍や代表初招集を受けていた時期です。

 そんな対照的な2人が現在では宇佐美が未だ代表デビューを果たしていないのに対して、武藤がすでにキャップ数10と刻むという逆転現象が成立しています。

 所属クラブのガンバ大阪が国内3冠を獲得していても代表に招集されない宇佐美。プロでの実績が実質1年の武藤に完全に逆転されるのは、日本独自の育成環境が背景にあるのでしょう。

 今後も何かと比較される2人だと思いますが、切磋琢磨してもらいたいと思います。