開幕10戦9発と得点ランクトップを走る広島FWピーター・ウタカ

 今季3度目の複数得点。開幕10試合で9ゴール。特に1トップに定着してから6試合で7ゴールと大爆発中だ。

 「ドウグラスに比べると実績に乏しい」「未知数」開幕前には各メディアの識者にそう過小評価されていたサンフレッチェ広島の元ナイジェリア代表FWピーター・ウタカ。そんな彼が明治安田生命J1リーグ第1ステージで開幕から10試合の出場で9ゴールを奪い、得点ランクのトップを走っている。(AFCチャンピオンズリーグ出場の影響でサンフレッチェはJ1リーグ1試合未消化。)

昨季21得点記録の”最強助っ人”ドウグラスの後釜

 ウタカは昨季の広島でリーグ21ゴールを挙げたFWドウグラスの穴埋めとして補強された。ドウグラスの中東移籍(アルアイン/UAE、チームはACLでベスト16進出。)が発表されてから直ぐに広島への加入が発表されたFWなのだから、明らかに“後釜”だ。

 ただ、ウタカがドウグラスに比べて実績で劣っているとは全く思わない。以前に筆者が書いた記事「サンキュー・ドグ!リバウドを想起させたドウグラスがいたサンフレッチェの1年」にも記述したが、ドウグラスは広島に来るまではJ1リーグで無得点のFWだった。J2・徳島ヴォルティスでクラブ史上初のJ1昇格に大きく貢献はしたが、そのJ2でも通算109試合29得点という実績は外国籍助っ人FWとしては失格の烙印を押されても何も言えない数字だ。それに対して、ウタカにはベルギー(2部)やデンマークでリーグ得点王の実績、中国リーグでも3クラブに渡って3シーズンのプレー経験があり、ACLにも出場経験がある。ナイジェリア代表としても9キャップを記録しているウタカは、明らかにドウグラスよりも「実績は上」だ。

 ところが、2015年に広島で21ゴールを記録してリーグ優勝に導いたドウグラスに対して、同年にJ1リーグの清水エスパルスに加入したウタカは同9ゴールに留まり、クラブ史上初となるJ2降格を阻止できなかった印象が強いのか?ウタカの評価は「未知数」になってしまうのが日本のメディアなのだ。

相思相愛の広島加入、多彩なパターンで得点量産

 ただ、広島がそんなウタカ獲得に至った理由が素晴らしい。2012年と2013年のJ1リーグを連覇した広島は、2013年と2014年のACLに出場。グループステージで2年連続して北京国安(中国)と対戦したのだが、2014年大会の北京国安を最前線で引っ張っていたのがウタカだった。両チーム勝点5で迎えた第5節、グループステージ突破への勝負所となった中国の地で満を持して広島の前に立ちはだかったのがウタカだった。

 2013年大会で未勝利に終わった広島にとっては、エクアドル代表のドリブラー=ホフレ・ゲロンに粉砕された記憶が著しいのだが、そのゲロン等のスピードや突破力を活かすウタカのポストプレーが見事だった。北京国安のサッカーは最前線の外国籍FWにロングボールを放り込むという所謂、「助っ人外国籍FW頼みのサッカー」だった。しかし、そんな“大味なサッカー”“ダイナミック”とより良い表現に置き換えるべきなくらい、全てのボールを柔軟なボールタッチで収めるウタカのプレーは目を引いた。試合は2-2の壮絶なドローに終わったが、対戦相手ながら森保一監督や織田秀和現社長(当時は強化部長)等も一貫してウタカは、「ウチに欲しいタイプの選手」として獲得選手のスカウティング対象になった。

 そしてウタカ自身も2015年から日本で1シーズンをプレーした後に広島への加入が決まった際には、「Jリーグではサンフレッチェ広島と川崎フロンターレが最も美しいプレースタイルを持っている」と話した。相思相愛の加入となったのだ。

 そして、相思相愛のクラブへ加入したウタカは水を得た魚だった。昨年のエスパルスにしても、それまでの中国での所属クラブにしても、ウタカを狙ったロングボールの多い攻撃を志向していたからだろう。ウタカは本当に楽しそうにプレーしているのだ。

 得点パターンも豊富だ。バイタルエリアでの緻密なパスワークから複数の選手が連動して奪ったゴール、クロスからのヘディング、マイナスやグランダーの折り返しを的確なポジショニングで呼び込んで確実に決める知性的なゴールもある。試合には敗れたが、第6節の鹿島アントラーズ戦ではDF塩谷司からの縦パスをスルーして後方に流し、自ら相手DFと入れ替わってスピードで抜け出す形からの得点も決めた。特に右サイドのクロアチア人MFミカエル・ミキッチとは早々とホットラインと呼べるほどの連携を構築している。

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