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西野朗監督がガンバ大阪に残したビッグタイトル「攻撃サッカー」(前編)

 コレを観ても西野監督就任後に成績は安定しているのが一目瞭然。しかし、同時に早野監督時代からの積み上げは大きかったのも確かであるとも読み取れます。

 それでも西野監督がガンバ大阪に残した最大の功績というのは、確固たるスタイルの確立です。おそらくこれは成績以上に難しい事です。

 「ガンバ大阪と言えば、攻撃サッカーやパスサッカー、ポゼッションサッカー」と呼ばれるイメージを作ったのは、間違いなくブレない西野監督の手腕があったからこそ。そして、才能ある選手に対して戦術で雁字搦めにせずに、「ガンバはシステムありきでタレントが成立するのではなく、タレントありきでシステムが成立する」という名言を残しているように、戦術論でなく、タレントを組み合わせてチームを作ってきた事です。

 特に就任当初は日本代表でフィリップ・トルシエ監督が“フラット・スリー”という独自の守備システムを採用していたり、中田英寿の参戦もあってイタリアの戦術論が日本でも話題となり、各チームが戦術に固執する時代を切り抜けてのパスサッカーへの転換、というのは斬新且つ理想的な発展の仕方だったと思います。

 就任当初は長身FWマグロン目掛けてのロングボールやクロスの多用から始める現実路線からスタートしたわけですが、徐々にポゼッションを握る事を積み上げ、そのマグロンが2004年に大怪我をして長期離脱した時がターニングポイントとなりました。それがパスサッカーへの転換です。

西野監督の大きな弱点 コーチを育てられない

 逆に西野監督の弱点は一人で何でもしてしまうところです。長所でもあるのですが、彼の場合はここが短所となり、アシスタントにつくコーチなどが出世していく、という例が全くないのがその証拠です。

 西野監督後のガンバ大阪で、昨季は国内タイトル3冠を達成した長谷川健太監督は、清水エスパルス監督時代の参謀であった田坂和昭氏が大分トリニータの監督として羽ばたいて行きました。田坂監督はクラブ消滅の危機にもあったチームでJ1昇格を果たすなど、今季で5年目という長期政権を築いています。

 海外で言うと、世界最高峰の指揮官と言われるチェルシーのジョゼ・モウリー二ョ監督は、自らのコーチとして参謀にしていた、アンドレ・ヴィラス・ボアス(現ゼニト・サンクトぺテルブルク監督、チェルシーの監督には移籍金17億円でFCポルト(ポルトガル)から就任。そのポルトでも就任1年目で国内リーグの無敗優勝と国内カップ、ヨーロッパリーグの3冠を達成)や、チェルシー時代のセカンドチームの監督を務めたブレンダン・ロジャース(現リヴァプール監督。2011年にはスウォンジーでは所在地が初のウェールズにあるクラブを初めてプレミアリーグに昇格させた。)、チェルシー時代の守備コーチであったスティーヴ・クラーク(現レディング監督)などが現在は監督として同じピッチでライヴァルとなっています。

 モウリーニョ関連で言うと、モウリーニョ自身が現在はマンチェスター・ユナイテッドの監督であるルイス・ファン・ハールがバルセロナの監督をしていた当時のアシスタントコーチをしており、当時共にアシスタントコーチをしていたのが、現在はサウサンプトンの監督であるロナルト・クーマンであったりします。“モウリーニョ一派”の影響力の大きさはこんなところにもあるわけです。

 そうした名指揮官に名参謀あり、であるはずなのですが、西野監督にはいません。練習なんて全て監督が指導するべきではない、という監督もいるのがサッカーの世界であり、モウリー二ョもそう。モウリーニョ自身がアシスタントコーチ(または通訳)だった時代は、サー・ボビー・ロブソン監督の下では、ロブソン氏が現場の指導を行い、マネージメントをモウリー二ョがこなす、という事もあったり、ルイス・ファン・ハール監督の下では、ファン・ハールが練習の指導にはあまり当たらないから、モウリー二ョが主に指導していた、という事があります。彼はこの両極端な監督のスタンスを経験できた事が自らの指導者としてのレベルアップや理想像を作りあげるのに大きく役立ったと言っています。

 その意味では、僕の大好きなアーセナルのアーセン・ヴェンゲル監督も西野監督と似ている部分があるのかもしれません。テクニックを重視し、中盤でのアップテンポのパスワークとプレス、高いDFライン設定という志向するサッカーの内容はもちろん、還暦を迎えるような年齢でもスタイリッシュな体系と端正なルックス、クールな佇まいまでも似ているような気もします。

 以下、簡単にまとめて本稿は締めたいと思いますが、とにかく名古屋グランパスに行っても、西野監督のご活躍を祈っております。後編ではもう少し具体的に攻撃サッカーに対して書きたいと思います。しばしお待ち下さい。

【西野朗監督の長所】

①攻撃サッカーという確固たるスタイル、クラブイメージの確立

②戦術で選手を壊さない

③安定した成績

④たった一人で全てを掌握し、チームを導ける

【西野朗監督の短所】

①固執しすぎる攻撃への姿勢から、墓穴を掘る。(本人も「もっと柔軟にやれば獲得出来たタイトルもあった」と認めている)