ヴァヒッド・ハリルホジッチ監督が就任して1年3カ月ほどが過ぎた日本代表。最近では2枚看板である本田圭佑と香川真司が負傷やコンディション不良で先発を外れる事が多くなったように感じる。
 そうした采配をハリルホジッチ監督が出来るようになったのも、これまでは本田と香川のスペア的存在にしか見られていなかったMF清武弘嗣が、ここ最近の代表戦で多くの得点に絡んでいるからだろう。
 ただ、そんな清武が所属するハノーファーは今季、彼自身が2度の負傷で長期離脱している間に極度の不振に陥り、ブンデスリーガ最下位で2部へ降格した。
 チームの10番を背負う絶対的なタレントで、「ハノーファーは清武のチーム」と言うのは、日本人だけでなく、ハノーファーのチームメートや現地メディアにも共通認識されている。
 今季の清武はリーグ21試合の出場で5得点6アシスト。6度のマン・オブ・ザ・マッチを受賞し、個人としては大活躍だった。国内外からの獲得オファーが殺到するのも当然。「残留を願っている」とのクラブ側のコメントは少しでも移籍金を吊り上げたい常套文句だ。

 そして、正式発表はメディカルチェックを終えてからだが、すでに移籍先クラブのHPで日本語表記の「ようこそ、キヨタケ」が表示され、新天地はスペイン1部リーグの強豪・セヴィージャに決まった。
 1996年のアトランタ五輪終了直後は、当時の日本の五輪代表の主将だったMF前園真聖さんの獲得も狙ったクラブで、あのアルゼンチン代表の「神童」ディエゴ・マラドーナも在籍したクラブだ。

EL3連覇の快挙を果たした名門~公式戦63試合を経ての戴冠

 スペイン南部のリゾート地であるアンダルシア州に本拠を置くセヴィージャFCは、今季のUEFAヨーロッパリーグで大会3連覇の偉業を成し遂げたクラブだ。
 ただ、その裏では国内リーグのアウェイ戦を未勝利(9分10敗)で終える極端な内弁慶ぶりも露呈していた。
 実は、今季のセヴィージャは、昨季のEL優勝チームとして欧州最強の座を決めるUEFAチャンピオンリーグにも参戦。グループリーグ3位で敗退したが、ELの決勝トーナメントに回って優勝を掴み獲ったのだった。
 その過程では、スペイン国内のカップ戦であるコパ・デル・レイの決勝進出(決勝はバルセロナに敗れる)もあり、公式戦を全63試合も戦うという超過密日程を乗り越えた末の戴冠だった。(下記参照)
 そんな強豪クラブに清武は加入するのだが、ここへ来てセヴィージャの内部が揺れている。

「世界最高の強化担当」モンチSDの下で強豪クラブへと成長

 セヴィージャを語る上で外せないのは、「世界最高の強化担当」とも評価される、ラモン・ロドリゲス・ベルデホ=通称“モンチ”SD(スポーツ・ディレクター)の存在だ。
 2000年夏にモンチ氏がやってくるまで、セヴィージャは1部リーグと2部リーグを行き来するエレベータークラブだった。それどころか、放漫経営がたたり、クラブ施設内の電気代すら払えないほどの深刻な経営危機に直面していた。
 しかし、選手の移籍金ビジネスの高騰に着目し、モンチ氏主導の下で無名の有力な若手選手を、「安く買って、高く売る」というポリシーを貫いてチームを強化し始めた。
 ダニエウ・アウべスやイヴァン・ラキティッチ、アドリアーノやセイドゥ・ケイタなど、「外様はチームに適応しにくい」というジョゼップ・グアルディオラ時代から現在に至るまで、バルセロナには多くの有力選手を高額な移籍金で送り込んだ。額面通りに活躍ができるので、「高い」とは思わせない。
 また、移籍金収支で得た資金は育成組織への投資でも成功を収めた。現チームの10番を着るMFホセ・アントニオ・レジェスや、レアル・マドリーのDFセルヒオ・ラモス、マンチェスター・シティのMFヘスス・ナバス、リヴァプールのDFアルベルト・モレーノなどスペイン代表にも多くの選手を輩出している。