「柏木のワンタッチプレーの多用が今後のヒント~「ワンタッチが良い、ツータッチは普通」クライフ論」

 1-1のドローに終わったイラン戦。日本代表に約3年半ぶりに復帰した浦和レッズのMF柏木陽介のプレーには、ハリルホジッチ体制スタートから皆無になっていた攻撃のディティ―ルが詰まっていたように見えました。

 この試合、確かに60分以降はそれまでとは集中力が散漫になりました。しかし、柏木は72分にピッチに登場すると、とにかくボールに多く絡みながらも、そのボールタッチの多くをワンタッチで捌く事で攻撃や試合にリズムを付けていました。彼がシンプルに捌いてはパス&ゴーで前へ出て絡んでいくプレーをしていく事で、攻撃に厚みが出ていたと思います。彼自身が今後も代表で生き残っていくかどうか?は恐らくこの日も途中出場の立ち位置だったために相当厳しいと考えられます。しかし、彼が見せたワンタッチプレーの数々には現在の日本代表が過去20数年の間に積み上げて来ながら忘れている部分を感じさせてくれました。

 現在の日本代表には過去には皆無だった武藤嘉紀や宇佐美貴史、原口元気、未招集の乾貴士や、パサーでもある清武弘嗣や香川真司など、ドリブラーや個人で仕掛けられる選手が増えました。しかし、それでもアジアの強豪と比べると身体能力では劣る日本がどうやって他国と“差”をつけて来たのか?W杯5大会連続出場(1回は開催国枠)やアジアカップでは1992年大会から2011年大会までの6大会中4回の優勝を成し遂げてたのか?

 
 世界から見れば圧倒的に弱小国ばかりのアジアですが、それでもいつの時代にも強烈なシュート力を誇るFW、長短自在の展開力を持つMF、爆発的なスピードを持つドリブラーやサイドアタッカーのような強烈な“個”を持つ選手は各国に存在しました。それが世界レベルと何が違うのか?それはプレスをかけられただけで、そのシュートの威力が半減したり、そもそも前を向けなくなったりするからだと思います。“フリーで良いプレーができる選手”がかつてのアジアでは良い選手と評価されていたのです。

 日本には強烈な“個”を有する選手はいませんでしたが、上記のようなプレスをかけられた状態になった時、どのポジションの選手もワンタッチプレー(パス)で局面を打開して有利な試合運びをしていたように思います。中田英寿や名波浩、小野伸二、中村俊輔のような創造力に優れたMF陣は華麗なスルーパスのアシストで湧かせて来ましたが、彼等はスルーパスよりもワンタッチパスの精度が最大の武器だったのではないか?と思います。

 「日本はアジアのバルセロナ」の言葉のように洗練されたサッカーを披露してきた原点。それはワンタッチプレーにあり、だと筆者は思っています。

 かつてバルセロナで選手としても監督としてもレジェンドであるヨハン・クライフは、「ワンタッチでプレーできる選手は良い選手、ツータッチは普通の選手、スリータッチは下手な選手」という極論を唱えていましたが、その意味は日本のサッカーファンには痛いほど理解できるのではないでしょうか?

 再びクラブに戻った柏木には所属する浦和レッズで、来月中旬の日本代表シリーズまでにJ1リーグ年間1位を決定すべく活躍してもらいたいものです。

 彼のプレーには“日本サッカーの原点”があるのですから。