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アーセナルFWジョエル・キャンベルは”エジル依存”を打破する存在となれるか?

コパ・アメリカでの得点翌日にアーセナル加入

 2011年の7月にアルゼンチンで開催されていたコパ・アメリカ(南米選手権)には日本が招待国として参加予定になっていたため、日本では地上波放送で南米の強豪たちの熱戦をお手軽に観る事が出来た大会だった。(日本は東日本大震災の影響もあって出場を辞退。)

 そのコパ・アメリカ2011に日本の出場辞退により急遽参加する事になったコスタリカは、翌月に行われるU20W杯コロンビア大会に出場するユース代表に経験を積ませるために多くの若手を出場させていたが、グループリーグ第2戦でボリビアを相手に2-0と大きな勝利を挙げた。その試合の2点目を挙げたのが当時19歳のFWジョエル・キャンベルだった。

 トップスピードのままスルーパスを受けて、難しい角度からながらも難なくゴールに流し込む姿を見て、「大人な選手だな」、と感じたアーセナルファンの筆者は、「こういう選手がアーセナルにいたら良いかも」と思ったのを記憶している。未だに覚えているのは、この試合の翌日にキャンベルのアーセナル加入が決まったからだ。「こんな事ってあるのか?」がいつまで経っても忘れられない思い出でもあるのだ。

 コパ・アメリカの後に行われたU20W杯コロンビア大会にも当然ながら主力として出場したキャンベルは、4試合に出場して2ゴールを挙げ、コスタリカのベスト16進出に貢献。2009年にもU17W杯ナイジェリア大会にも出場して得点を決めている。

 だからこそ、2011年夏にアーセナルに加入した彼になかなか英国の就労ビザが認可されない事が自分の事のように悔しかった。同時期に日本のスピードスター・宮市亮(現・ザンクトパウリ/ドイツ2部)に特例の認可が下ったからでもあった。

チェンバレンや宮市の影となるも、武者修行で培った豊富な国際経験

 しかし、レンタル移籍を繰り返す事になったキャンベルは、その先々で着実に実績を残して来た。1年目の2011-2012年シーズンは現チームメートのフランス人MFフランシス・コクランを始め、アーセナルの若手選手の武者修行先としても有名なフランス1部リーグのロリアンでプレー。ヨハン・グルキュフの父であるクリスティアン・グルキュフ監督が3期に渡って延べ25年間の長期政権を執ったチームで欧州のキャリアをスタートさせ、準レギュラーながらも欧州基準のフィジカルを培った。

 2年目はスペイン1部リーグのベティスで主に<4-4-2>の右サイドMFの主力としてプレー。破産宣言をした事で移籍金を伴う有力選手の獲得が許されない2部リーグから昇格2年目のベティスをリーグ7位フィニッシュで、ヨーロッパリーグ出場に導いた。右サイドからのカットインやスルーパスだけでなく、ダイアゴナルランで中盤からのパスを引き出すオフ・ザ・ボールの動きも体得したキャンベルにはベティスからレンタル延長オファーがあった。(ベティスは完全移籍には移籍金が発生するためにオファーは出せない。)

 3年目の2013-2014年シーズン。コスタリカのフル代表でもエース格に成長したキャンベルには各国からのオファーが殺到。その中で彼が選択したのはギリシャのオリンピアコスだった。ここでも右サイドMFやトップ下として起用され、これまでよりも自由を与えられて攻撃の柱となってプレーした。チームも2000年以降の国内リーグでは最多の勝点86(28勝2分4敗)を獲得して独走でリーグ優勝。それだけでなく、欧州チャンピオンズリーグでもベスト16に進出。2戦合計2-3で敗れたものの、マンチェスター・ユナイテッド相手にホームでの第1戦で彼が得点も挙げて2-0と勝利するなど、キャンベルは欧州全体に自身の存在をアピールした。

 シーズン終了後、確かな実績を残して挑んだ2014年のW杯ブラジル大会。キャンベルは初戦のウルグアイ戦から1得点1アシストで逆転勝利に貢献し、マン・オブ・ザ・マッチの大活躍を披露。ウルグアイとイタリア、イングランドのW杯優勝経験国が3つも入る史上初の死の組で、コスタリカは2勝1分無敗の首位通過を果たした。決勝トーナメントに入ってもギリシャを下し、オランダとスコアレスのPK戦で惜敗するまで番狂わせを連発してベスト8まで勝ち上がった。そんなコスタリカで1トップに君臨するキャンベルはジャイアントキリングを牽引する存在となっていた。(ブラジルW杯5試合1ゴール)。

 CLやW杯での大活躍により、いつしかキャンベルは、宮市やアレックス・オックスレイド・チェンバレンといった同時期にアーセナルに加入した同年代の選手よりも、圧倒的に国際的な経験が豊富な選手となり、2014年夏にやっとアーセナルのトップチームに本格的に合流した。