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突然のアギーレ監督解任劇 ~手腕の確かを評価するならば

突然のアギーレ監督解任劇 タイミングとしては悪くないが・・

 開催国・豪州の優勝で幕を閉じたアジアカップ。最後に総括記事を書こうと思っていたのですが、2月3日の夕方に日本サッカー協会で記者会見があり、日本代表のハビエル・アギーレ監督との契約を解除した、と電撃解任の報が入りました。

 確かにアジアカップは準々決勝のUAE戦でPK戦による敗戦により、1996年大会以来のベスト8敗退という低い成績で終わりました。しかし、今までの日本代表とは違って相手を圧倒しながらも、緻密な守備意識も浸透した逞しいチームになっていました。結果が出なかったから、「守備力がない」「ボール際で勝てない」などの批判がありますが、ずっと試合を観ていたサッカーファンや、何より代表に招集された選手達はアギーレ監督の確かな手腕は感じているはずです。ましてや、守備力とボール際の競り合いという部分はそれこそ”歴代最強”と言えるほど逞しかったと言えるはずです。豪州や韓国といった張り合いのある相手と対戦していないとはいえ、UAEもそれほど酷いサッカーをするチームではありません。その相手に圧倒し続けた事実は内容だけでは語りつくせないと言えます。

 とはいえ、結果ではなく八百長疑惑の告発を受理が確認されたからこそ、日本サッカー協会は解任に踏み切ったのは事実でしょう。何よりもファンや選手よりもスポンサーの意向が強いのが事実だと思います。それはそれで否定しません。アジアカップという日本にとってはW杯の次に大きな国際大会が終了し、次回のロシアW杯予選が始まる前というタイミングも悪くないと思います。

前兆があっただけに責任逃れを危惧

 しかし、アジアカップ2戦目のイラク戦前日(1月15日)にスペイン発で八百長疑惑の告発が受理された、との“報道”。当局が公式に声明を出したのではなく、あくまでも“報道”。これに対して、その日の大仁邦彌会長は、「この話題についてはアジアカップ開催中は封印します。大会終了後に正式に発表します。」と述べました。この時点で、僕は、というよりも多くのサッカーファンは大会終了後の監督退任が決まっているのだと悟りました。大会もベスト8敗退という結果だけ見れば解任理由になる低成績でしたから。

 でもここで大仁会長がなぜか「試合内容は良かったし、手腕を高く評価しているので続投」を明言しながら、「技術委員会に決定は委ねる」という責任逃れ。

 今回の解任発表会見でも「もっと調べておくべきだった」と大仁会長は言ってますが、この八百長疑惑は日本で大々的に報道されたのはアギーレ監督が日本代表監督に就任した直後ではありました。しかし、サッカーファンの間ではその1年前(つまり今から1年半前)から知っていた人は多いはずです。僕のスペイン在住の友達は「たぶん1年半前から国民みんなが知っている」と言っていました。当然ながら日本サッカー協会も「契約前は知らなかった」と言っていながらも、それは嘘。絶対に知ってはいたはずです。告発されて受理される、とは思っていなかった、というのが本音だと思います。なにせスペインでは2010年までは八百長が犯罪ではなく、刑罰が与えられる法律がなかったわけですから。

 そうは言っても多少グレーなことは考慮しても、アギーレ監督の実力・実績の確かさ、ブラジルW杯や前年のコンフェデレーションズカップでの惨敗による日本代表の課題修正・発展に置いて、最も相応しく適合する条件の持ち主だったのは明白。アギーレ監督のサッカーの好き嫌いは別として、監督人事に置いては最適の人選を行ったと思います。

 それだけに“任命責任”を会長が技術委員会や実際にアギーレ監督と2010年頃から長い年月に渡って交渉を先導していた原博美 現専務理事(当時は技術委員長)に矛先が向いているのが悲しいです。原さんがいなければ、アルベルト・ザッケローニ、ハビエル・アギーレ級の大物との接触自体が門前払いですから。2010年夏にはマンチェスター・シティの現監督マヌエル・ペジェグリー二(当時はフリーで、直後にスペイン1部マラガと契約)とも交渉の席を持てる人材が責任を取らされるような状況はおかしいし、日本サッカー界の後退にしかなり得ません。何より会長が部下に責任転嫁する発言が多過ぎる事の方が危機的です。

日本はサッカー先進国ではない 失敗も成功の基と捉える器量が必要

 ザッケローニ体制が失敗に終わったかもしれませんが、今の日本代表や日本サッカーの状況では、それだけで技術委員会などの体制を一新するのはリスクが大きすぎます。それこそ継続性を重んじるんならば、技術委員長にはW杯2大会分=つまり8年ほどの任期を与えなければ結果しか残りません。

 日本は欧州のサッカー先進国ではないので、W杯で結果が出ないだけでは失敗ではありません。もしそれが失敗ならば、ブラジルW杯の未勝利によるグループリーグ敗退を“驚き”として世界中が大きく報道するはずです。しかし、スペインやイングランド、イタリアがグループリーグ敗退に終わった時は、世界中が大きく騒ぎましたが、日本の敗退は“順当”に何もなかったかのように扱われました。それが証拠に他なりません。

 サッカー先進国ではない日本にとっては失敗も成功の基です。失敗を分かってる人間にしか出来ない事もあるはずです。このまま体制が一新すれば、様々な事から悠長に”研修期間”のようなよちよち歩きから始まるだけです。

 欧州の先進国には100年以上の歴史がありますが、日本にはプロリーグが出来てから20年をやっと超えたばかりで今年が23年目。人間の年齢に直せば大学卒業を前に社会へ出る準備をしている最中です。また、W杯初出場からは僅か17年です。社会で未だ確たる成果を成し遂げていない日本には放っておいても誰かが何とかできる環境も、ノウハウもないと言えます。地理的にも極東は世界のサッカー環境から見れば不利です。

 だから、ファンもサポーターもスポンサーもマスコミも、日本はサッカー先進国ではないことを受け入れる器量が必要だと思います。また、サッカー協会も世界を意識するならば、日本の企業からのスポンサードに期待するのではなく、そちらの面でもグローバルに考える必要はあるでしょう。