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「マネーボール」のビーンGMがオランダサッカーで革命を起こす

 先日までオランダに滞在しておりましたので、現地で気になった話題を紹介します。

メジャーリーグを震撼させた「マネーボール」

 ハリウッドのイケメンスターと言えば、年代問わずに出てくる名前はやっぱりブラッド・ピッド。その彼が主演した映画「マネーボール」で演じた主人公はビリー・ビーン。アリメカの野球リーグMLS(メジャー・リーグ・ベースボール)オークランド・アスレティックスのゼネラルマネージャー(GM)です。そのビーン氏が今年の3月にオランダ1部リーグのAZアルクマールにアドバイザーとして就任し、現在欧州の各国リーグも大詰めを迎える水面下、現地・オランダではAZの移籍市場での動きに注目が集まっています。

 彼がGMとして強化に勤しむアスレティックスは資金力に乏しく。映画では2001年、野球界で世界一の資金力を持つ球団であるニューヨーク・ヤンキース相手にプレーオフ敗退が決定した場面からスタートしており、そのシーズンオフに主砲のジェイソン・シオンビーやリードオフマンのジョニー・デイモン、抑え投手のジェイソン・イズリングハウゼンという絶対的な看板選手である3人が退団して行きます。契約満了でフリーエージェントとなる彼等には他球団から来る高額オファーに勝てなかったのです。

 アスレティックスはそれまでも低予算ながら、ビーンGMの巧みな手腕で集められたチームで地区優勝やワイルドカードによるプレーオフ進出は可能な成績を出していたのですが、それも先細りとなって限界が見えて来ていました。また、ビーンGMもせっかく育った主力を残留させられない無念さも感じており、斬新な改革が必要とされていました。そんな中、ビーンGMは選手のトレード交渉のために訪れたクリーブランド・インディアンスの事務所で、1人の男性分析担当アシスタントと出会い、選手ではなく彼をヘッドハント。彼と協力し、固定概念なく、データを使って「低予算でも勝てるチーム」作りを決断します。

 打者には一般的に重視される打率や本塁打数は気にせず、「盗塁はアウトになる可能性があるから無意味」などとし、出塁率や死四球、長打率などを求めました。投手には勝利数や防御率は投手本人だけの成績に左右されていないと考え、ストライク率の高さや、被本塁打の少なさ、奪三振率の高さなどを求めてチームを編成。当初はデータに頼り過ぎて批判も浴びましたが、それだけでは「人間がデータに使われているだけ」なため、データを上手く使ってチームを組織して歯車が噛み合い始めたチームは連勝街道を走り始めました。

 その結果、セイバー・メトリックスを導入した初年度の序盤こそ苦しんだものの、その2002年にはシーズン100勝を達成。年俸総額が1位のヤンキースの約3分の1程度だったにもかかわらず、メジャー全球団で最高の勝率を記録する成果を叩き出しました。野球の世界で選手や監督に継ぎ、GMが評価されるパイオニア的存在となったのがビーン氏であったとも言えます。

ビーンがAZを選んだ理由~トータル・フットボールの斬新さ

 そんなビーン氏はアスレティックスの業務はもちろん継続し、あくまでアドバイザーとしての就任ですが、その経緯には興味深い背景がありました。

 2014年の10月、AZはヤンキースでもプレーした経験があるオランダ人の元メジャーリーガー、ロバート・フランシスカス・エーンホーンをクラブのゼネラル・ディレクターとして就任させていました。エーンホーンはワールド・クラシック・ベースボールのオランダ代表監督も務めた人物です。

 AZのテクニカル・ディレクターであるアーニー・スチュアートは上記の映画に感銘を覚えており、エーンホーンを介してビーン氏とコンタクトを取り、野球やサッカーだけでなくスポーツの話を通して接近。野球シーズンのオフ中にビーン氏をAZのクラブ施設の見学やリーグ戦の観戦に招待し、このほどのアドバイザー就任となった模様。