欧州では二重国籍の選手がユース時代プレーした国と別のナショナルチームをA代表で選択していても驚く必要はない。女子W杯、10代まで男性だった選手が性転換してA代表に出ていたら驚く。「この前まで男だったろ!?」と言いたくなる(体格差のある)相手に“なでしこ”の健闘をたたえる・・・

呼び覚ましたサンドニでの記憶

2012年クープ・ドゥ・ラ・リーグ決勝。既に勇退が決まっていたディディエ・デシャンに導かれオリンピック・マルセイユが三連覇を成し遂げた。個性豊かなタレントが揃う中、既視感のあるヌクルとエムビアのカメルーンCBコンビ。2年前のW杯南アフリカ大会初戦で日本と対戦したときはエムビアが右サイド、ヌクルは右CB。エムビアの強烈なシュートに日本中が肝を冷やした。ステファーヌ・エムビアは、カメルーンで生まれ17歳でフランスに渡りプロデビュー。フランス国籍を取得している、フランス領から独立したカメルーンにも20世紀前半までドイツ保護領だった時代がある。但し第一次世界大戦の敗戦後、ヴェルサイユ条約は、英仏二か国による分割統治を定め、現在ドイツ領時代の面影は微塵もない。


[スタッド・ド・フランス]

 2枚目の写真は意表を突いて … ケバブである。この写真はロンドンで撮影した。今や欧州各都市どころか上野のアメ横でも手軽に買えるが、一昔前はドイツの街をうろつく時の楽しみのひとつがケバブ屋だった。イスタンブール滞在時など1日1回は食す好物だ。
 ドイツとトルコ両国の距離が縮まったのは19世紀から20世紀にかけて、露英仏三国と共に対立、第一次大戦時の同盟国として戦後も経済文化の活発な交流関係を保つ。第二次大戦後のドイツは少子化と労働力不足に悩み打開策としをトルコからの出稼ぎ労働者を受け入れた。彼らは戦後の復興に貢献しドイツ国内各地にトルコ人コミュニティが誕生して今日にいたる。

黒海沿岸にトラブゾン・シュポル在り

 UEFAヨーロッパリーグ(EL)予選は2回戦に突入した。注目するのはシュペルリグ昨季5位のトラブゾン・シュポル。

 トルコ東部黒海沿岸の都市トラブゾンのクラブは、一極集中の同国でイスタンブールの強豪に唯一対抗出来得る存在。イスタンブールよりもグルジアの首都トビリシに近く、歴史を紐解いても同国との結びつきの強い地域である。
 現指揮官のジョタ・アルベラーゼはグルジア人。現役時代トラブゾン・シュポルでプレーする大型FWの名が欧州に知れ渡るのは1997年アヤックス・アムステルダムへの移籍以降。引退後もAZアルクマールでファン・ハールや、ディック・アドフォカート、ロナウド・クーマンなど蘭国名将の下で指導者の道を歩んできた。昨季までの3シーズンはイスタンブールのカシンパシャを率いている。
 現戦力では4ー2ー3ー1の選択が有力か。各ポジションのキーマン、まずは最終ラインを統率するカルル・メジャニ。昨年ブラジルW杯、ハリルホジッチ監督の指揮で躍進したアルジェリア代表のCB。グループリーグは全試合出場したが、シュールレ、エジルのゴールに散ったドイツ戦はベンチで苦渋に顔を歪めたはず。フランスからトルコに戦場を移して30試合出場はチーム最多。リヨン出身の彼はユース年代までは、フランス代表。しかし2010年以降A代表はアルジェリアを選択した。

有色人種だらけの欧州の代表 白人が目につくアフリカの代表

 19世紀前半オスマントルコ支配下のアルジェリアを侵略したフランスはマルセイユに統合され多くのフランス人が移住した。マルセイユからの距離はパリもアルジェリアもたいして変わらない。アルジェリア人に対する差別意識は強く、20世紀まで混血が存在していないのがその証でもあり、スペイン、ポルトガル人とは明確に異なる。逆にフランス人に仕事を奪われたアルジェリア人がフランスに出稼ぎに来たのが、移民国家フランスの始まりでもある。
 トルコ代表に定着したメーメット・エキジ。ブレーメンでは存在感を誇示できなかったが昨季のシュペルリグでは水を得た魚のごとく29試合出場9得点。
 このエキジはミュンヘン生まれ。バイエルンで純粋培養された選手。U-21まではドイツ代表でプレーしていた。カシンパシャから完全移籍したオゼル・フルマジュもカッセル出身で17歳時にスカウトされ以後トルコでプレー、結果トルコ代表を選択した。 
 スウェーデン代表のエルカン・ゼンギンは更に複雑。トルコ人の両親のもとトルコで生まれ、スウェーデンで育ちプロデビューもアルスヴェンスカン。
 しかしユース代表はトルコ。Uー21からスウェーデン代表に選ばれユーロ2016予選に出場しているが現在の主戦場はトルコ国内。エキジ、フルマジュ、ゼンギンと攻撃的MFのタレントは豊富。そして中盤の底に一枚“大物“が欲しいところで、ヨーロッパリーグ連覇の肩書を手土産に、エムビアは黒海にやってきた。前線のカルドソは29試合17得点。彼に関しては第五の巻で散々書いたので省略。
 7月16日FCディフェルダンジュ03(ルクセンブルク)戦は、前半終了間際エキジのゴールで先制。メジャニを中心にDF陣も無失点で今季の公式初戦を白星でスタートしている。