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紀行文のあとがき 第2回 オランダフットボール変遷史(前編)


 全六話は当初三つの異なるテーマにセパレートされていた。

・ファン・ウェルメスケルケン・際のプレーを中心に海外五輪世代の現状。
・ジュビロ磐田の一部復帰を祝って、Jリーグ創世記の回想。
・アヤックス主導によるオランダフットボール戦術の変遷。

 異なるテーマに共通項が多いため、具材を鍋に放り込んでしまったが、三番目のオランダフットボールは、生煮えで悔いが残る。

 オランダフットボール戦術の変遷を二回に分けて振り返る。近代史の幕開けは1970年代リヌス・ミケルスが考案し、マスコミが「トータルフットボール」と名付けたスタイルを、当時10歳で東京12チャンネル「ダイヤモンドサッカー」と活字のみで理解した気になっていた小僧も、今やネットで検索すれば動画で確認できるのだから文明の発展は有難い。「渦巻き状に攻めてくる」のテキストに「木の葉の里の忍びかよ!?」と笑ってしまう表現を真面目に熟読していた当時を思い出しながら1974年W杯西ドイツ大会前後のオランダ代表とアヤックスを動画サイトで片っ端から視聴した。

 ポジションのない自由なサッカー等と表記されているが、四十年を経てまず断言できるのは、「ヨハン・クライフ」なる不世出の天才を活かすために考案された戦術であるという事。現代の育成システムからは誕生しないであろう究極のオールラウンダーが液晶画面の中で躍動している。クライフターンに代表されるドリブル、シュートセンス、現代ボランチに求められる視野の広さ等、あらゆるポジションのすべての要素が一級品のJC

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【2014年バルセロナ。クライフとの初対面。手前の黒髪が筆者の後頭部。】

 リフティングやヒールキックなど遊び心に溢れた妙技を実戦の場で披露し、特に印象に残ったのはセンターフォワードの彼が最終ラインまで下がりゴールキーパーからボールを受け敵陣へと攻め上がる場面。コミックやアニメの主人公が現実に存在した姿は二十~三十代の方も必見。リベロのベッケンバウアーが最後尾から前線にあがってシュートを決めているし、他のチームでもオーバーラップの動きは取り入れている。しかしこのセンターフォワードがビルドアップに関与する動きとボール保持者を後方の選手が追い抜く動作《オーバーラップとインナーラップ》を連続するのはアヤックスとオランダ以外に見当たらない。サイドバックがシュートを撃つ機会が多く、これが未来のフットボール、渦巻きの正体である。

 まずフットボールとはボールを相手ゴールにいれる作業=攻撃は個人能力7に対して組織戦術の占める割合3。反して自分のゴールにボールを入れさせない作業=守備は個人能力3、組織戦術は7の比率というのが筆者の持論。小学生にはフォワードもセンターバックも同じように大切と諭しながら、心の底では「ディフェンダーの移籍金としては高すぎる」などの発言が飛び交う欧州移籍市場に納得している。

 ミケルスの考案した戦術の革新性はこのオーバー&インナーラップの連続性ではない。特筆されるのは、ボールを奪われた瞬間に最も近くの相手を各自がチェックするプレスの原型に着手したこと。それまでのサッカーではマンマークが基本、一人余裕を持たせてスイーパーを置いたりしたが、相手が頻繁にポジションチェンジをしない時代の対応としては何ら問題なし。しかし自分達がポジションを前後左右入れ替わるスタイルを実践した為にマンマークに変わるアイディアの必要に迫られたのだ。そして前列追い越す動きを繰り返す際各列の間に空いたスペースを埋めなければならず、押し上げが必要になり、ハンス・オフトから我々が学んだ「スモールフィールド」。コンパクトなサッカーへと変化する。

 ところが80年代に入るとトータルフットボールに天敵が現れる。後方に人数をかけてボールを奪ったら前線にロングボール放り込み。中盤省略してのカウンターである。

 そこでミケルスとクライフの師弟コンビは、新たな守備戦術を確立する。その名も「ポゼッション」

 現代ではポゼッションの対義語でリアクションが用いられるが、その起源はカウンターを封じる手段として、「自分達がボールを持っている限り、自分達のゴールにボールを入れられることはない」という守備的目線である。

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Y.Yokozawa
1964年生 / 東京都在住 / Xイチ独身 自称サッカルチャー欧州特派員。プレス席申請の際に 媒体名は「soccerlture.com」と記入するようにしてます。

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