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23年目のJリーグ開幕に想う~2ステージ制はちょっとした回り道

 すでにアジアチャンピオンズリーグで2試合を消化しているチームが4つあり、ガンバ大阪と浦和レッズはスーパーカップも合わせると3試合を消化しているため、「あれ?まだ国内リーグは開幕してなかったか?」という変な感覚があるクラブのサポーターの方々もいらっしゃると思いますが、3月7日からJリーグが開幕しました。

 23年目。人間の年齢で言うと23歳とは4年生大学を卒業して就職した新社会人。社会の荒波にもまれ始める年齢です。少し遡ると高校卒業のタイミングであるJリーグが18歳だった2010年。我々は(日本サッカー)南アフリカワールドカップでグループリーグを突破してベスト16進出。その半年後のアジアカップでは優勝。世界的に見ると“優秀な高校生”だったJリーガー達は欧州の名門大学へ引き抜かれたり、または大学受験校をその欧州の名門大学に指定したのかもしれません。そして、世界的大企業へ引き抜かれる“グローバルな社会人”となった日本人選手もいます。名門大学とは選手育成に長けたドルトムントを筆頭とするブンデスリーガをイメージし、世界的大企業とはマンチェスター・ユナイテッドやACミラン、インテル・ミラノをイメージすればしっくり来るのではないでしょうか?

 Jリーグは23歳になり、今年から10年間続けていた1ステージ制をいったん断念し、2ステージ制に移行します。スーパーステージなる“解りにくい”レギュレーションとは裏腹に、テレビ放映権料を筆頭とするスポンサー欲しさ、いや資金不足は“解りやすい”という皮肉があります。2ステージ制導入を批判する声がメディアだけでなく、サポーターからも噴出しています。サッカーとは解りやすいルールを前提として世界で最も普及したスポーツですから、解りにくさが入るのは微妙です。世界最高峰のリーグが1ステージ制でやっているんだから、コレを後退と見る考えも御もっともです。

 しかし、その反対理由を、「今までも盛り上がっているんだから」とする声が多い事にはいささか同意できないばかりか、逆に危険に感じます。「盛り上がっている」のはコアサポーターだけで、昨季J1リーグ優勝の懸かった第32節の浦和レッズVSガンバ大阪は視聴率3.2%で、最終節(34節)の優勝が決まった徳島ヴォルティスVSガンバ大阪は同4.2%と、共にNHKで生中継されながら深刻な数字に終わっています。

 今、“俺達のJリーグ”と叫ぶ人達は、“俺達だけのJリーグ”にしようとしている事に全く気付いていないのです。

“百年構想”の中の回り道

 Jリーグは“百年構想”を唱えています。サッカー界のトップである欧州とは百年の歴史の違いがあるからです。簡単に言うと、1853年に鎖国していた日本にペリー船長の黒船が来航してから10年後、イギリスでサッカーが正式に誕生しています。正式なルールが出来たのがこの年ですから、それ以前からラグビーと合わせたようなルールで各学校ごとに異なった競技をしていました。逆に日本はまだ刀をしていた時代です。もし競技力としてJリーグが欧州トップリーグと、または日本代表が欧州の列強国と対等の実力に追いついていたとしても、この“百年の差”は競技力以外でボロが出てくるでしょう。日本という国は高度成長時代の急成長を色んな犠牲のある中で突っ走ってきた中で、現在になってボロが出てきているように・・・・。

 そう考えると、「百年の構想の中の回り道」と捉えれば2ステージ制くらい何でもない。そもそも「社会に出る学力がついていない」ために“留年”している?もしくは南アフリカW杯時には優等生だったために、難関大学を目指して予備校(スペイン流パスサッカー?)に通っていたために、まだ在学中かもしれません。

23年目の開幕は”選択肢のあるJリーグ”

 留年だろうと、浪人だろうと、下積みだろうと、別にそれでいいんじゃない?百年の中の回り道なんだから。そもそも予備校行かせて難関大学に行かせる事を最優先していた時代もある日本では、Jリーグの2ステージくらいの回り道なんて余裕で許容範囲でしょう。せっかく回り道するんだから、しっかりとアルバイト代(テレビ放映権料など)を稼いで、実りあるモラトリアム期間とし、思いっきりの良い社会デビューとなるようにしてもらいたい。それは「まだ2ステージ制のJリーグを観た事がない」という若いサポーターも、2ステージ反対の“俺達だけのJリーグ”にしようとしている人達も同じ想いですよね?

 昨年の天皇杯決勝カードであるガンバ大阪VSモンテディオ山形のNHK全国中継視聴率は4.3%。しかし、こと山形県内に限れば、その数字は50%に達する域でした。Jリーグはこの22年間で1部リーグのみだった10クラブから2部リーグ制で40クラブとなり、昨年からはJ3も合わせると50クラブを越えました。“底上げ”は出来つつあります。底上げというのは、この“山形現象”もそうですが、地方からもたらされています。Jリーグのファン層の平均年齢が毎年1歳近く上がっているため、新規ファンが少ないと言われますが、こうした地方では年配からサッカーを嗜むファン・サポーターの方が続々と出て来ているために、その数字には変化がないとも言えるのです。彼等は本当に「俺が町のチーム」を大事にしています。本当に自分達で育てたようなクラブでもある地域もあるんですから。

 同様に指導者ライセンス制度の徹底やトレセン制度で日本サッカー協会手動の育成で“ある程度”までは底上げ出来ています。17歳ぐらいまでの育成は世界トップレベルです。しかし、底上げは出来たけれど、エリート教育は出来ていないのか?はたまた応用が出来る段階に来ていないだけなのか?

 韓国は協会主導の育成プロジェクトの一環で、ソン・フンミンをドイツのハンブルクのアカデミーへ留学させ、彼はそこでプロ契約を勝ち取って、現在は欧州チャンピオンリーグ常連のレヴァークーゼンに引き抜かれました。レギュラーとして先日はスペイン王者のアトレティコ・マドリーに勝った試合でも勇敢にプレーしました。ベルギーはこの“仕上げの育成”にかかる年齢に差し掛かると、トーマス・フェルマーレンやヤン・フェルトンゲン、トビー、アンデルワイレルトはオランダのアヤックス、エデン・アザールはフランスのリールへと隣国の優秀なアカデミーへ加入させて“仕上げ”てもらい、今ではプレミアリーグやスペインリーグでビッグネームとなって活躍しています。

 日本はどうか?高校2年生から本格的なプロ選手としてプレーしているガンバ大阪のFW宇佐美貴史は、Jリーグで2年半プレーした後、世界的ビッグクラブであるバイエルン・ミュンヘンやホッフェンハイムでドイツでの2年を経て、ガンバ大阪へ復帰して1年半。その国内外でのプロ生活6年を経験した宇佐美に対して、FC東京からトップチーム昇格を言い渡されながら、それを拒否して進学し、大学リーグでプレーしていた武藤嘉紀が宇佐美を追い抜いて日本代表に定着しています。宇佐美が代表キャップゼロに対して、武藤はすでに10。育成年代から世界的なエリートで欧州でのプレー経験もある宇佐美でも、大学リーグで地道に自身を磨いた武藤が逆転できる下地というのは日本独自の育成環境、国内リーグでしょう。いっけんそれは微妙なのですが、“選択肢”が出来た事が大きい。

 今までは高校のサッカー部で顧問の先生やチームメートと上手く行かなければそこで終わりでしたが、今は高校年代でもクラブチームもあるし、中学校、小学校年代に下がるに連れてもっと選択肢は多い。大学からのプロ入りも即戦力を提供できる。こんな選択肢のあるサッカー環境は世界でも稀有な国だと思いませんか?

 開幕戦から公式戦3連敗で挑む浦和レッズはすでに背水の陣。ACL参戦チームは第1ステージを捨ててでもACLに注力すべき。いやいや、残留争いのチームは2ステージ制に関係なく、ずっと年間順位を見てブレなく戦うというのも選択肢。